平成16年12月15日に平成17年度の税制改正大綱が発表になりました。焦点の定率減税は、平成18年分の所得税から、現在の20%から10%に縮小されることになり、控除限度額は最大25万円から12万5千円に半減されます。住民税についても同様に、現在の15%から7.5%へと縮小され、控除限度額も最大4万円から2万円へと半減されます。個人住民税は平成18年6月徴収分から実施されます。
全体的に増税色が強いものとなった今回の税制改正大綱ですが、その中で、人材投資(教育訓練)促進税制が創設され、注目を集めています。
Ⅰ.制度の概要
青色申告書を提出する法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入される教育訓練費の額が、その法人の直前2年以内に開始した各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された教育訓練費の平均額を超える場合には、3年間の時限措置として、その超える部分の金額の25%相当額の税額控除を認める、というものです。ただし、当期の法人税額の10%相当額を限度とします。
Ⅱ.中小企業者等(注)の特例
青色申告書を提出する中小企業者等については、上記Ⅰ.の制度の適用に代えて、各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される教育訓練費の額に対し次の控除率による税額控除が認められます。ただし、当期の法人税額の10%相当額を限度とします。
なお、この中小企業者等の特例は、法人住民税についても適用があります。
①教育訓練費増加率(当期の教育訓練費の額からその直前2年以内に開始した各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された教育訓練費の平均額を控除した金額のその平均額に対する割合)が40%以上 20%
②教育訓練費増加率が40%未満 教育訓練費増加率×0.5
つまり、青色申告書を提出する中小企業者等は、Ⅰ.とⅡ.のどちらか有利なほうを選択することができます。
この制度は平成17年4月1日から平成20年3月31日の間に開始する事業年度について適用があります。
まとめてみますと、次のとおりとなります。
1.中小企業者等以外の法人
適 用 要 件 |
控 除 額 |
直前2年以内の教育訓練費の平均額(A)<当期の教育訓練費(B) |
次のいずれか少ない金額
①{(B)-(A)}×25%
②当期の法人税額×10%
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2.中小企業者等
適 用 要 件 |
控 除 額 |
当期の法人税額×10%を限度として、いずれか多い金額 |
直前2年以内の教育訓練費の平均額(A)<当期の教育訓練費(B) |
{(B)-(A)}×25% |
教育訓練費増加率≧40%の場合 |
当期の教育訓練費の額×20%
(法人住民税についても控除額あり)
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教育訓練費増加率<40%の場合 |
当期の教育訓練費の額×教育訓練費増加率×0.5
(法人住民税についても控除額あり)
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たとえば、直前2年以内の教育訓練費の平均額が50万円の中小企業者等が、当期120万円の教育訓練費を支出した場合(増加率58.3%)、120万円の教育訓練費が損金の額に算入されるのはもちろんのこと、24万円の法人税の税額控除プラス41,000円の法人住民税の税額控除が受けられるというわけです。この機会に社内研修を充実させてみてはいかがでしょうか。
(注)中小企業者等
中小企業者等とは、資本もしくは出資の金額が1億円以下の法人のうち、次に掲げる法人以外の法人または資本もしくは出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人および農業協同組合等をいいます。
①その発行済株式の総数または出資金額の2分の1以上が、同一の大規模法人(資本もしくは出資の金額が1億円を超える法人または資本もしくは出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除く)の所有に属している法人
②①に掲げるもののほか、その発行済株式の総数または出資金額の3分の2以上が、大規模法人の所有に属している法人
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