朝倉令子税理士事務所
事務所案内 業務案内 相続対策遺産整理 料金について セミナー情報 拝啓社長殿 HOME
最新情報
最新情報

定期借地権の権利金が償却可能に、収益も期間対応


平成17年1月17日

  平成17年度税制改正では、定期借地権の権利金にかかる取扱いの明確化が図られます。これは、国土交通省が、平成17年度税制改正要望事項の中で、「定期借地権の設定に伴い差し入れられた権利金の償却措置の導入」として税制改正の要望事項として掲げていたものです。今回、平成17年度税制改正の中で、「取扱いの明確化」として盛り込まれました。

■改正の内容
 
定期借地権については、権利金方式と保証金方式があり、このうち、保証金については、支払った借主側は資産計上、受け取った貸主側は預り保証金として負債に計上され、どちらも課税関係は生じませんが、将来、返却する必要があります。
  それに対して権利金方式の場合、権利金を支払った場合には、将来返却されないにもかかわらず、減価償却することが認められていません。契約期間満了時に全額費用化する取扱いがなされています。それが、今回の改正では、契約書で明確に「地代の前払い」であると明示した場合には、権利金は地代の前払いであるとして、期間に応じて費用化されるようになります。
  逆に、権利金を受け取った場合にも、現在の取扱いでは、受け取った権利金は一時に課税されるため、地主が個人の場合には平均課税の適用を受けたとしても、金額が大きければ超過累進税率で最高50%の所得税・住民税が課税されます。ところが、今回の改正で、受け取った権利金に関しても、地代の前受けとして、収益の計上を期間対応させることができます。

■具体的には
 
例えば、A社が地主Bさんから時価5億円の土地を50年の定期借地権で借りたとしましょう。定期借地権設定時に一時金として2億円支払うとすると、現在の取扱いでは、A社は権利金として資産計上、Bさんは、2億円が受け取った年の所得となり、総合課税の対象となります。Bさんは、所得税が約7,150万円、住民税が約2,600万円、合計で約9,750万円の税負担となります(平均課税の適用を受けた場合には税額が違ってきます)。しかも、この受け取った権利金に対する課税を避けようと、保証金方式をとった場合、保証金2億円の相続税評価額はたったの9,500万円です。2億円の返還義務がありながら、相続税の計算では、9,500万円の債務控除しか認められません。
  今回の改正では、この2億円が、A社では地代の前払いとして50年で償却できるようになり、毎期400万円が50年間で費用化されます。Bさんも、地代の前受けとして毎年400万円の収益を50年間計上することになります。

■それぞれのメリット
 
A社は、一時金として支払った2億円が50年間で費用化され、節税効果を考えると(実効税率を40%とします)実質1億2千万円の資金負担ですみます。毎年160万円の資金が回収されるわけです。土地を取得した場合には、その土地を売却しなければ資金の回収ができませんが、定期借地権なら、権利金を支払ってもそれが償却でき、資金の回収が効率的です。
  Bさんは、土地を売却した場合には、売却益に対して20%(所有期間5年以下の場合は39%)の所得税・住民税が課税され、その土地の権利も失うことになりますが、定期借地権を設定した場合には、受け取った一時金の収益計上が期間対応されることにより、所得税が大幅に軽減されます。遊休不動産を抱え込むリスクからも開放されますし、一時金は返済義務がないため、その資金を他の事業に投資することもできます。相続した土地に定期借地権を設定し、受け取った一時金で相続税を納めたり、代償分割の資金に充てることも可能です。
 
しかし、まだ明らかになっていないこともたくさんあります。例えば、個人の場合、時価の2分の1未満の価格での譲渡は時価で譲渡したものとみなされますが、今回の前払い地代の取扱いがどうなるのか、また、契約書の記載はどのようになるのか、といった点がまだ明らかになっていません。
         いずれにしても、日本の土地の取扱いがガラリと変わるでしょう。
                                           (税理士 朝倉 令子)


 
トピックスINDEX home pagetop
Copyright © 2015- Asakura Reiko Tax Accountant Office. All Rights Reserved.